買ったばかりのバイクをマンションの駐車場に止めて、部屋を見ると。
「・・・か」
わしの口元が緩んだ。
来てくれたんよの、何せわしの誕生日じゃけぇ。

「おかえりー晴一」
ドアを開けると、そこにはいつもの笑顔。
わしが一番好きなそれ。
「ただいま、
わしはドアを閉めてぎゅっと彼女を抱きしめた。
「あははは、痛い晴一」
「久しぶりじゃけぇ」
「甘えんぼがー」
「あはは、呆れた?」
「ううん、すっごく嬉しい」
また可愛いこと言うんだから。
そんなこと言うから抱きしめたくなるんよ。
「いいから離れろー」
「あー、すまんの」
わしは名残惜しかったけどに回した腕を解いた。
「のう、。今日何の日でしょ?」
「んー、燃えるゴミの日?」
「なっ・・・違う!しかもそれは明日じゃけぇ!」
「えー、じゃああれだ」
「ん?何々?」
「自民党総裁選」
「・・・」
確かに、今日じゃったのう。
そりゃあ社会に目を向けることもゴミ出しの日も大切じゃけど。
すると、わしが深刻な顔をしとったせいか、がぷっと吹き出した。
「あはは、ごめんごめん」
「もー・・・の意地悪」
わしは唇を尖らせた。
「お誕生日おめでとう、晴一」
はにっこりと笑って言った。
「晴一も三十路過ぎだってのに、大人げないなぁ」
「若い、って言うて」
「あーはいはい」
はわしの言うことをさらっと流した。
まるでのほうがずっと大人っぽい。
は年の割りに老けとるん違う?」
「げっ、最悪だ。晴一にはデリカシーがないのか」
はきっとわしを睨んだ。
「あーあーあー、すまん」
「まったく、ほんとに大人げがないな」
は苦笑いをしながらわしを見た。
わしもにつられて苦笑いを返した。
「じゃけぇ、それがわしのええところじゃろ」
「まあね、そんな晴一が好きなんだけど」
ああああああ。
わしは顔が真っ赤になった。
に気づかれないように右手で顔を覆った。

とは言え、わしももう若くはない。
昔みたいに誕生日じゃからって、みんなではしゃぐようなことはしなくなった。
家でとふたりでいる時間のほうがよっぽど楽しい。
ひとつ、ひとつ、歳を重ねるごとにその思いは強くなっていく。
気が付けば、がわしの肩に凭れかかって寝息を立てている。
「・・・ありがとう」
わしはの髪を撫でた。
こんな日だから、言えること。
普段は恥ずかしいし、昭仁じゃないから素直に言えないひとこと。
君とわしに、これからも素晴らしい日がやってきますように。

「・・・愛してる、

一年に一度の、特別な今日だからこそ。



そしてこれからも、




2006.09.20
HAPPY HAPPY BIRTHDAY/Dreams come true